心血管系の薬は一回飲み始めると一生飲み続けなければいけませんか?
薬物療法は患者さんの危険因子を除去し、心血管系の疾病・合併症の発生を抑制することが
目的です。従って、危険因子が、食事・運動療法などの一般療法で解決すれば、薬物は減量
もしくは中止することができます。
【例1】
体重を5kg減量したら、血圧が正常値になった。そこで、降圧薬を漸次漸減した。
それでも、血圧は正常値であった。降圧薬を中止できた例です。
【例2】
血圧は季節変動します。夏期は血管が拡張し、塩分も汗で体から出ていきやすいため、
高血圧は改善傾向を示します。一方、冬季は血管が収縮し、塩分も貯留しやすくなり、血圧は
上昇傾向となります。
従って、このような季節変動のある患者さんは、冬季に薬物療法を強化し、夏期は
減量するという具合に、臨機応変に対応しなければなりません。
降圧薬の副作用として「ふらつき」とあります。私のふらつきは副作用ですか?
薬剤によって極端に血圧が下がってしまうと「ふらつき」と自覚してしまうことがあります。
また、立ちくらみを「ふらつき」と誤解している場合があります。
頸椎・腰椎の変形や、脳梗塞でもふらつきと自覚します。
従って、本当に血圧が下がりすぎて、ふらついているのか?見極めることが重要です。
私のふくらはぎが時々つるのですが、脂質改善薬の副作用ですか?
脂質改善薬の稀な副作用として「黄紋筋融解症」が報告されていますが、ごくごく稀の疾患です。
採血でも否定されています。
従って、ふくらはぎの痙攣は、腰部脊椎管狭窄症による可能性が高いのではないでしょうか?
血を固まりにくくする薬剤を飲んでいますが、皮膚の皮下出血は薬剤のためでしょうか?
抗血栓薬は抗血小板薬と抗凝固薬に分類されますが、両者とも、過剰投与でなくても、
皮下出血がおこることがあります。
軽度のものであれば、薬剤による長所の方が優先されますので、経過観察で良いと思います。
皮下出血の程度が中等度以上であれば、薬剤を減量いたします。
他科でこの様な薬剤が処方されたのですが内服してもよろしいでしょうか?
循環器用剤では抗凝固薬であるワルファリンが他剤の影響を受けやすいです。
特に、抗炎症薬(風邪薬、痛みどめなど)や抗生物質はワルファリンの作用を増強しますので、
これらの薬剤を2日間以上続けて内服する場合には、ワルファリンを減量することが必要です。
心カテは危険ではないでしょうか?
心カテは血管に、カテーテルを挿入する侵襲的検査ですので、心電図や超音波検査に代表される
非侵襲的検査に比較し、危険度が高いのは確かです。稀ですが、運動負荷心電図時に、危険な
不整脈が認められ、心肺蘇生が必要な場合もあります。
心カテは、午前中に行い、当日、夕方に退院も可能な検査ですが、万全を期して、2泊3日として
おります。また、検査は心カテに精通した循環器専門医が担当しておりますので、ゼロではありま
せんが、危険度は極めて低いと言えます。
以前に心電図をとったのにまたとる必要があるのですか?
普通は、心電図が正常である場合には、定期健康診断程度の頻度、すなわち半年から1年に
1回程度で十分です。しかし、何か、症状がある方、もしくは、異常が疑われる場合には、頻回に
心電図を調べる、もしくはホルター心電図を何回か繰り返すことが必要です。
突然死をきたすことのある「ブルガダ症候群」では、心電図が午前と午後では変化する場合が
あります。
ペースメーカーを挿入すると携帯電話を使用できませんか?
ペースメーカーは左もしくは右前胸部の皮下に挿入されており、この直上に携帯電話を置くことはありませんので使用に関しては大丈夫です。挿入側の胸ポケットに携帯電話を入れることは控えましょう。
冠動脈形成術では再狭窄があると聞きましたが?
再狭窄率は、バルーンのみの治療では30%、非薬剤溶出性ステント(従来のステント)では20%、
薬剤溶出性ステントでは10%といわれています。従って、80%の患者さんは、一回のカテーテル治療
でその病変は治ってしまいます。
再狭窄の際には、再度形成術を行うことになります。従って、約95%の患者さんは、2回の
カテーテル治療で治癒してしまうことになります。
むしろ、今まで無かった所に新たに狭窄病変が出現することがありますので、前記した、危険因子
の除去を継続し、薬物療法を続けることが重要です。
カテーテル治療後、再度、心カテを行う必要があるのでしょうか?
再狭窄は、治療後3カ月から6カ月で認められますので、狭心症症状が出現しなければ、
6カ月前後に再検査をすることが重要です。造影CTでは、治療した血管部位の詳細な情報まで
描出できませんので、心カテをお勧めいたします。
冠動脈形成術・血管形成術は高額ではありませんか?支払いができるか心配です?
確かに、私どもの使用する治療器具は、精巧で高額な治療器具を使用し、外国製品も少なく
ありません。大体、一回の総治療費は100万円前後と高額です。
しかし、日本には、手続きをすることによって、自己負担を減らせる制度があります。
高額療養費制度によって、入院費用の窓口負担額は月額8万円前後です。
入院中の申請も可能ですので、入院医事課にお問い合わせください。